第1回としてはトマホークの調達を取り上げます。トマホークは言わずと知れた亜音速巡航ミサイルです。ここのところは海軍の艦艇(水上艦および潜水艦)から発射し、地上の標的を攻撃するために用いられてきました。なお、米海軍に加えて米海兵隊もLRF: Long Range Firesとしてトマホークの地上運用を始めます。
現在、トマホークの調達はミサイル全体の購入だけでなく、既に保有している弾薬の近代化・再認証、または新たな機能の付与を進めています。近代化・再認証については前者がModまたはNAVCOMM (Navigation Communication Modernization upgrades)、後者はRecertificationとして計上されており、配備15年を経過したBlock IVタクティカルトマホーク(TACTOM)は近代化と再認証を受けてBlock Vへアップグレードされます。FY25からはアップグレードにM-CODEと呼ばれるGPS受信機の改善プログラムが適用されます。
当時は母港移転「見込」だったUSS Shoup (DDG 86)は実際に母港を横須賀に移し、USS Dewey (DDG 105)やUSS Ralph Johnson (DDG 114)は改修・修繕作業が施され、USS Barry (DDG 52)はつい先日、2月17日に離日し、そして今度は近くUSS John Finn (DDG 113)が横須賀に母港を移すようです。
そこで今回はUSS John Finnを加えて、改修を反映して作成しました。このチャートではUSS John Finn と USS Rafael Peralta (DDG 115)が同じところに入っていますが、USS Rafael PeraltaはCIWSのカバーや5インチ砲の砲身に赤色が施されている点でも見分けられるかと思います。また、USS John Finnはブリッジの前にレーザー兵器であるODINを搭載しています。
若干余談ですが、USS Deweyは昨年からの改修でODINの設置位置に覆いをしており、長いことODINを確認できていません(2023年2月現在)ので注意が必要です。またUSS Ralph Johnsonは左舷後方向きのSPY-1のアレイ上に新しく衛星通信用途と思われるアンテナを追加しました(写真中央左のレドーム)。
2021年はバーク級DDGのうち、「フライトIIAリスタート」と呼ばれる建造再開初期にあたるUSS Ralph Johnson (DDG 114)やUSS Rafael Peralta (DDG 115)が横須賀に配備されました。USS Higgins (DDG 76)、USS Howard (DDG 83)、USS Dewey (DDG 105)も同年に横須賀に母港を移し、フライトIIA艦の配備が一気に進みました。なかでもUSS DeweyはODINというレーザーCIWSを備えていることから話題になったように記憶しています。そして2022年はUSS Shoup (DDG 86)が来日し、現在の体制になりました。
例年冬にはUS Naval Academy (USNA)とNaval Reserve Officers Training Corps (NROTC)から新任となる配属艦が選ばれます。そこでは勤務地が示されるため、配属先となる艦は今後1年程度の配備地が分かることになります。
今冬明らかになったのは、2023年のUSS John Finn (DDG 113)と2024年のUSS Preble (DDG 88)の横須賀への母港移転です。
USS John Finnは先に述べたフライトIIAリスタートのまさに1番艦であり、ODINを装備している点でも特徴的です。またSM-3やSM-6を用いた試験に多数従事してきたことも特徴的です。2020年11月に実施されたFTM-44では、USS John Finnは外部センサの情報を利用してSM-3 Block IIAミサイルを発射し、ICBM模擬標的の迎撃に成功したと発表されています。さらに2021年4月には、無人ビークルとの協同に焦点を当てた演習"UxS IBP 21"で無人ビークルによるES情報をもとにSM-6を発射し、水上目標に対するOTH攻撃を成功させたものと思われます。米軍は鹿屋基地にMQ-9を展開させており、非常に興味深いところです。
USS Preble (DDG 88)はODINとは別のレーザーCIWSである"HELIOS"を搭載している唯一の艦であり、現在はサンディエゴを母港としています。搭載改修は昨年夏に完工したばかりで、2024年の展開はなかなか挑戦的に思えます。実現すれば横須賀は有力なレーザー兵器を有する艦が集う有数の軍港と言えるでしょう。
今回、enhanced Portable Advanced Telemetry Acquisition System (ePATAS)と呼ばれるシステムが使用されたとされており、2020年11月のUSS John Finn (DDG 113)によるICBM模擬標的迎撃試験(FTM-44)でも利用されたようです。一方で設置されたアンテナを見てみると、Quasonix社のテレメトリシステムで利用されるアンテナのようです(おそらくPD300)。デッキ上のアンテナとしては後部VLSの右舷側に設置された剥き出しの白色パラボラアンテナと、煙突のホイップアンテナ横に設置された無指向性アンテナの組になるようです。NSWC CoronaとQuasonix社の契約は調達情報でも確認できますが、ePATASとはQuasonix社のシステムを利用したものなのでしょうか。