OSINFO

OSINTに昇華し損なったOpen Source Informationです

米海軍省2024年度予算を眺める — トマホークの調達

 アメリカの会計年度は10月スタート。3月は予算教書の季節です。

 先日から米海軍省所管の予算について徐々に資料が公開され始めました。数回に分けて(私の気になった部分の)概要を雑に眺めてみることにしましょう。

 

 ここで取り上げている資料は最終決定されたものではないですから、その点は誤解無いように願います。

 

 第1回としてはトマホークの調達を取り上げます。トマホークは言わずと知れた亜音速巡航ミサイルです。ここのところは海軍の艦艇(水上艦および潜水艦)から発射し、地上の標的を攻撃するために用いられてきました。なお、米海軍に加えて米海兵隊もLRF: Long Range Firesとしてトマホークの地上運用を始めます。

 現在、トマホークの調達はミサイル全体の購入だけでなく、既に保有している弾薬の近代化・再認証、または新たな機能の付与を進めています。近代化・再認証については前者がModまたはNAVCOMM (Navigation Communication Modernization upgrades)、後者はRecertificationとして計上されており、配備15年を経過したBlock IVタクティカルトマホーク(TACTOM)は近代化と再認証を受けてBlock Vへアップグレードされます。FY25からはアップグレードにM-CODEと呼ばれるGPS受信機の改善プログラムが適用されます。

 Block Vとして艦船攻撃型のMST: Maritime Strike Tomahawkが開発されて対水上攻撃能力を付与することが可能になりました。MSTの調達は昨年の資料で示された数量から絞られているようです。

 また、地上攻撃用にJMEWS: Joint Multiple Effects Warhead Systemの適用が可能です。このJMEWSキットは、FY23資料ではFY24から調達を開始する予定とされていましたが、来年度に延期された上で5年間の調達数は昨年の計画より増やされています。

 

 さて、なかなか込み入ったトマホーク関連の調達ですが、昨年(FY23)の資料と比較すると面白い変化が見られます。改修キットの調達を大幅に加速し、新品の購入を絞る方針のようなのです。

 FY23とFY24の資料に書かれている数字を並べると次のように整理できます。

TACTOM関連調達計画

 前述の通りM-CodeはNAVCOMMsに組み込まれ、Recertificationはアップグレードの翌年分で計上されていることがわかります。そして昨年の数字から、新品の購入計画数が削られていますが、これは日本のトマホーク購入のための分配がなされたものなのかどうなのか。もっとも、FMSとして既に含まれた数字が示されているのだとしたら謎が深まりますが。

 詳細はまだ公開されていないのでわかりませんが、なかなか興味深い数字が並んでいます。