米海軍ソノブイ予算 FY25
今年もBudget Estimateが出ました。恒例になりつつありますが、米海軍ソノブイ予算を概観する季節です。
https://www.secnav.navy.mil/fmc/Pages/Fiscal-Year-2025.aspx
https://www.secnav.navy.mil/fmc/fmb/Documents/25pres/OPN_BA3_Book.pdf
FY25の要求額は3.23億ドルであり、これはFY24までの最高額を上回って過去最大額の要求です。もっとも、FY20以降は3億ドル前後(FY20-23実績値、FY24予算計上)が継続して上げ止まっているのが現状です。
FY25もソノブイ予算ではSSQ-53G DIFAR, SSQ-62F DICASS, SSQ-101B ADAR, SSQ-125A MACとSSQ-36 BTの調達が予定されます。調達額の内訳の推移を確認すると、FY25の調達はFY24と同様にSSQ-125 MACの調達に予算を多く割いていることがわかります。MACはこれら5種のブイの中で突出して高価なマルチスタティック音源であり、予算資料中でもMACの十分な調達によって効率的な潜水艦捜索が可能になると強調されています。
現在のソノブイ調達を困難なものにさせている要因のひとつが、製造体制の変更です。米海軍はこれまでERAPSCOというジョイントベンチャーと契約していましたが、FY24からはこのJVを解体し、これを構成していたSpartonとUSSIの2社、そしてLockheed Martinそれぞれと契約することになります。この2社生産体制は将来的には競争力を生み出すでしょうが、現在においては体制の構築と製造能力の認証、そして生産量の分割によって十分なメリットを生むに至っていません。
これらを原因として、Lockheed Martinが単独で全量を生産するSSQ-125を除いた4種はFY25で単価が上昇しています。SSQ-125の調達の要求と単価の上昇から導かれた結果は、SSQ-53の調達数の減少です。SSQ-53はソノブイ調達数の7割前後を占めており、SSQ-36を除いた4種の調達要求総数はFY24の約18.7万個からFY25で約13.9万個まで減少しました。
この単価の動きを少し異なる視点から見るために、DIFARの価格を1としたときのそれぞれのブイの相対的な価格で推移を見てみましょう。これを見る限り、何か特定のソノブイが急激な価格上昇を生じているわけではないことがわかります。SSQ-101Bはかつて原材料を原因として価格が上昇しましたが、そのような個々のソノブイに由来する大きなコスト上の課題は、少なくとも表出していないと言ってよいでしょう。