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【盛夏のハワイ写真録】USS TulsaのAN/TPY-3レーダー設置【その3】

 すっかり秋も深まってきましたが心は夏のハワイ、第3回です。

 この夏、米海軍の沿海域戦闘艦USS Tulsa (LCS 16)はハワイに居ました。米海軍はNSM (対艦ミサイル)を装備したインディペンデンス級駆逐艦を複数隻、西太平洋に展開させる方針をとっており、同艦はかねてからその一部として西太平洋に展開していました。7月ごろはハワイはパールハーバーを拠点に動いており、複数目撃されています。その後は7月末に母港サンディエゴに戻り、現在は浮きドックで整備に入っているようです。

 さて、7月に撮られたUSS Tulsaの写真を見ると、珍しいことに気付くと思います。ヘリ甲板にレーダーシステムを設置しているのです。確認できるのはAN/TPQ-53レーダーシステムでも使用されるAN/TPY-3レーダーと牽引式発電機、そして複数のコンテナです。

USS Tulsa艦上に展開したレーダーシステム (VIRIN: 220707-N-EE352-1198)

 通常、TPQ-53はM1092 2両にそれぞれTPY-3と運用・通信用のAN/VPC-95シェルターを載せ、各々が牽引式発電機を繋いでいます。今回見られるのはこのうち車両に依存しないレーダーのみのTPY-3と牽引式発電機1基のみであり、他に民生用発電機とみられる機器と、処理・運用用途と思われるコンテナが2基(大・小)見られます。また、興味深いことにTPY-3は基部と空中線部で塗装が異なります。

 こういったコンテナをベースにした運用ステーションは船上における一時的な運用ではよくあることですし、たとえばTPQ-53にも参画しているKratosのような企業は、それらの経験を生かしてコンテナ等にも十分なEPを施して運用ステーションとして仕立てている例があります。

 これの正体が気になるところですが、端的に不詳です。3か月待ってみましたが公式発表は見ている範囲ではないようです。ただ気になるのは、この運用の目的です。安易に出てくるところでは、LCSを単に海上プラットフォームとして海上や港湾における運用のテスト、もしくは、むしろLCSの能力の不足をこのような形で補う運用のテストでしょうか。最近も発表がありましたが、米陸軍はTPQ-53のC-UASにおける能力の評価を行っているようです。

news.lockheedmartin.com

 C-UASは米海軍でも喫緊の課題としている分野であり、電子攻撃・妨害または指向性エネルギー兵器を用いた(空中、水上を問わない)無人機への攻撃手段の開発配備が目立ちます。一方で攻撃以前に目標を探知追跡する手段は言うまでもなく重要な位置を占めます。米海軍は以前カリフォルニア沖で米軍艦をストーキングするUASらしき飛行物体を発見した旨報告していますし、折しもロシア艦がUSVによって攻撃を受けたらしいという話もあります。今後は探知手段についても議論が熱を帯びるであろうことは疑いようもなく、本件も関連する可能性があり興味深いところです。