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RIMPAC 2026: Saildrone USVへのJQL JAGM発射機統合

前回:

orca-oruka.hatenablog.com

 

 RIMPAC 2026の海上演習への参加のため、JBPHHに入港していた各国海軍艦艇が続々と出港していき、その中にSaildrone Surveyor (SD-3001)の姿もありました。

 米海軍は第5艦隊にTask Force 59として無人機を集中運用する任務部隊を持ち、Saildroneも同部隊で使用していました。SurveyorはTF59で使用されていたSaildroneよりも大型で、航洋性や搭載能力に比較的優れたタイプです。

 

出港するSaildrone Surveyor (SD-3001)の様子 (VIRIN: 260708-N-WN039-1010)

 今回撮影されたSaildroneをよく観察すると、セイルの前にLockheed Martinのロゴが入った見慣れない突起物があります。これの正体はおそらくSaildrone搭載用に改良を加えたJQLのバリアントでしょう。

搭載された発射機 (VIRIN: 260708-N-WN039-1010)

搭載された発射機 (VIRIN: 260708-N-WN039-1016)

 

 JQLはLockheed Martin社が開発するJAGM用地上/水上発射機です。JQLはJAGMに限らずLOAL (lock-on after launch)が可能なHellfireも発射可能と思われ、これらは対地/水上に限らずC-UAS用途の対空射撃に使用可能であることが実証されています。

JQL ©Lockheed Martin

https://www.lockheedmartin.com/content/dam/lockheed-martin/mfc/pc/jagm/22-15188-TM_AGMS_Product-Card-Updates_JAGM_JQL.pdf

 

 Lockheed Martin社はSaildrone社へ5千万ドルの投資を実施することを昨年に発表しています。2社の連携によりSaildrone Surveyor USVへJQLを統合し2026年中に発射試験を行うことを目指しており、今回のRIMPACで発射試験を実施するのか気になるところです。

www.saildrone.com

RIMPAC 2026: 新たな電子戦装置か?

 6月24日、ハワイでRIMPAC 2026の訓練開始式が行われました。演習は7月31日まで1カ月余りにわたって実施される予定です。RIMPAC及び付随して行われるフィールドテストでは、これまでSLQ-62など新しい装備や技術の試験が行われてきました。RIMPACは広報が充実した多国間演習であることもあり、写真からこれらの装置を発見するのに都合の良い機会でもあります。今年も面白いものが複数見つかっているので、複数回に渡って紹介します。

www.cpf.navy.mil

 

 まずは、新たな電子戦装置について。米海軍はDESRON 60としてスペイン・ロタに前方展開しているバーク級DDGに電子戦装置SLQ-62を搭載しています。これは第6艦隊の担当海域で想定される脅威に対応するための措置で、特にロシアの対艦ミサイルへの対抗手段である可能性が想定されます。これについては過去にまとめました。

orca-oruka.hatenablog.com

 

 SLQ-62の試験は過去のRIMPAC等に合わせて太平洋海域で実施されています。また、SLQ-62と架台などの構成部品を一部共通として、アンテナ部分に違いがみられる改良型もRIMPAC 2022, 2024で確認できます。

orca-oruka.hatenablog.com

 

 今回もまた同系統の新しい装置が確認できました。USS Carl M. Levin (DDG 120)はこれまでになかった機器を搭載しています。同様の機器はHMNZS Aotearoa (A11)にも搭載が確認できます。また、USS Decatur (DDG 73)にはDESRON 60で使用されているものに似た外見のおそらくSLQ-62が搭載されました。

USS Carl M. Levin (DDG 120)に搭載された新しい機器。ハンガー上に人が集まっているところに注目 (VIRIN: 260707-N-NB544-4081)

HMNZS Aotearoa (A11)へ搭載された機器 (VIRIN: 260707-N-QV397-1002)

USS Decatur (DDG 73)に搭載されたSLQ-62 (VIRIN: 260707-N-NB544-1096)

 アメリカはこれまでカナダ、ニュージーランドとTAPA (Technical Cooperation Program Anti-Ship Threat Project Arrangement)と呼ばれる対艦ミサイル対抗手段開発の枠組みにより、RIMPACに合わせて試験を行ってきました。今回の電子戦装置らしい機器も同様の目的で試験に供される可能性は高いでしょう。

 

米海軍DDGへのC-UAS用発射機搭載

Coyoteの発射機だったそうです↓

www.navalnews.com

 

 近年、米海軍は水上艦のC-UAS能力拡充を進めています。以前の記事でも述べましたが、DRAKEのようなソフトキルC-UAS装置が広く運用されているほか、ハードキル装置としてもUSS Bainbridge (DDG 96)などではRTX社のCoyote Block 2という対無人機迎撃体の発射機が搭載されたり、高出力レーザ(HELIOS, ODIN, 艦上運用試験は終了しましたがSSL-TM)も一部の艦に搭載されました。

orca-oruka.hatenablog.com

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 これらの装置が必要とされる背景には、無人機、特にone-way-attack型とも呼ばれるいわゆる自爆型無人機が、従来の高性能対艦ミサイルとは別種の脅威となることがあります。ターボジェット/ターボファン推進で亜音速飛行しシースキミングにより迎撃難易度の高い対艦巡航ミサイルや超音速対艦ミサイルと比べて安価に調達可能であり、一度の交戦に投入可能な数が多くなる傾向があります。高性能対艦ミサイルからの防御を想定した対空ミサイルを多数の小型無人機に対して使用すると、コストと弾薬搭載数の両面で問題が生じます。

 このような問題を解決するためには、安価で小型(搭載数を増やせる)な迎撃システムを準備する必要があります。同様の課題は地上や空中でのC-UAS戦闘にも当てはまり、対地精密攻撃を当初想定していた誘導ロケット弾APKWS IIを用いた迎撃(航空機からの迎撃や、VAMPIREと呼ばれるAPKWS II発射機搭載車両)が実証されてきました。また、米陸軍は加えてAH-64E搭載のJAGMや30mm機関砲もsUASとの交戦に使用できることを実証しました。

https://www.dvidshub.net/news/546975/army-demonstrates-apache-counter-uas-capabilities

 

 

 米海軍でもまた艦艇搭載型ハードキルC-UASとして、ヘルファイアおよびJAGMへのC-UAS機能付与に取り組んできました。LCSはもともと小型水上目標に対処するために対水上戦ミサイルモジュール(SSMS)としてヘルファイア用VLSを搭載し、ロングボウ・ヘルファイアを運用していました。中東での自爆無人機の脅威増大に伴い、2024年に米海軍は中東展開させるLCSのC-UAS能力向上のためヘルファイアにC-UAS機能を付与、すなわち対空射撃が可能な改修を施しました。

https://www.dvidshub.net/news/497066/navsea-honors-lcs-mission-modules-team-with-fy24-excellence-award-rapid-c-uas-upgrades-fleet

 ここで得られた能力を他の艦種に適用範囲を広げるため、新たなヘルファイア/JAGM発射機もまた検討されました。2025年1月に開催されたSurface Navy Associationの年会でヘルファイア/JAGM発射機を搭載したアーレイ・バーク級DDG模型が展示されました。

www.twz.com

 最近、ここで展示された発射機が実際に製造されてUSS Carl M. Levin (DDG 120)に搭載されました。この発射機は形状からおそらく起倒式で、水平に向けてミサイルを装填し(写真の状態)、発射時は90°起こして垂直に発射する運用となる可能性があります。これに関連して新たなレーダ等の搭載は無いようですので、艦がもともと持っている捜索手段(レーダおよび可視/IRセンサ)で目標を探知し、それに従い交戦するのでしょうか。

 もう一点重要だと思うのが、おそらく持つであろう対水上目標交戦能力です。近年は小型USVによる水上構造物や艦船に対する攻撃が実際に行われています。この部分はウクライナが実戦で有用性を実証してきているところです。対小型USV能力という観点でバーク級を見たときに主力となるのは砲熕兵器でMk 38機関砲、そしてMk 45およびMk 20、ほか機関銃でしょう。誘導兵器としては一部の艦に搭載されるSeaRAMから発射されるRAMに対小型舟艇交戦能力がありますが、他はより大型の対空ミサイルの対水上射撃や対艦ミサイルの類になります。ヘルファイア/JAGMの搭載によって小型USVに対して比較的長距離で適当な威力を持ち、同時交戦能力が強化されることになり、新たな脅威への対処能力を改善することができるでしょう。

USS Carl M. Levin (DDG 120)に搭載されたヘルファイア/JAGM発射機(米海軍, VIRIN: 260329-M-FP389-1205)

 詳細はまだわかりませんが、他の艦への搭載も含めて今後注目していきたい装備です。

 

 

 

(撃ち尽くしたら、短魚雷よろしくヘリパッドから格納庫上まで1発ずつ吊り上げるのかなぁ…)

駆逐艦から気球を飛ばす

 米海軍のミサイル駆逐艦のヘリ甲板から、ゴム気球を飛ばす様子の写真が公開されることがあります。

USS Delbert D. Black (DDG 119)から放球される気球 (VIRIN: 260111-N-WB617-1016, U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 1st Class Wendy Arauz)

 私はゴム気球と言えばラジオゾンデを飛ばす気象観測を思い浮かべるのですが、ここで放球している目的は気象観測ではありません。これは、BMD戦闘のためにAN/SPY-1レーダーの校正を実施するための手順なのです。

 そもそも校正はなぜ実施する必要があるのでしょうか。第一には正確な測定値が得られる状態を保つことです。天秤であれば、10gのものを量った際に10gと表示されることです。当然のことではありますが、前提を維持するためには欠かせないことです。

 レーダーの場合、例えば目標までの距離や目標の速度が正確に測定できているかということは、レーダーの性能を維持する上で重要です。(それを実現するための較正としては、さらにかみ砕く必要がありますが)

 このゴム気球の放球を伴う校正手順については、さらに発展させた校正システムの特許で背景技術として解説されています。

https://patents.google.com/patent/US12191570B2/en

https://patents.google.com/patent/US20230064088

 ここでは、BMD対応のイージス艦に搭載されるBSP (BMD Signal Processor: BMD信号プロセッサ) の校正において、外部校正試験のためにターゲットが必要であるとされています。上で掲載した写真は、このターゲット(左の人が抱えているネットに入った球体)を気球で飛ばす際の写真なのです。外部校正試験のためにはこの球体のターゲットを吊るしたゴム気球を複数個放球する必要があるそうです。ターゲットが球体であるのは、異方性が無くRCSの変動がないようにするためです。

 BSPの校正を行う必要があるのは、①前回の校正から半年が経過 ②BMD環境に入る72時間前 ③新たなコンピュータプログラムのインストール後 ④内部校正が失敗したとき ⑤送信機等の修理・調整 ⑥BSP Synthesizerの交換後 のいずれかに該当する場合とされています。これらにあたった場合はBSP較正を行う必要があり、①パルストレイン校正 ②中帯域RCS校正 ③ 合成広帯域RCS校正 ④コヒーレント積分RCSレーダー校正 といったメニューで実施するとされています。

 特にBMD環境で外部校正が必要となるのには、BMD時のレーダー動作が特殊であることが理由のようです。BMDにおいては迎撃すべき弾頭とデコイ(及びロケットモーター等)を識別するため、高い距離分解能が必要になります。そのために使用されているのが、上記校正メニュー③で対応することになる、合成広帯域 (Synthetic Wide-Band: SWB)と呼ばれる技術です。

 SWBは通常のレーダー動作における帯域10個分の周波数帯域を統合して、単一の帯域として運用するモードのようです。SWBによるレーダーでは通常の動作と比較して、高い距離分解能を実現でき、レンジ-ドップラープロットによる高精度な運動の解析が可能になり、広帯域信号によりターゲットの構造等の情報が得られることから、BMDの交戦において優れています。

William W. Camp, Joseph T. Mayhan, and Robert M. O’Donnell, "Wideband Radar for Ballistic Missile Defense and Range-Doppler Imaging of Satellites", Lincoln Laboratory Journal, Vol. 12, No. 2, 267-280 (2000).

https://archive.ll.mit.edu/publications/journal/pdf/vol12_no2/12_2widebandradar.pdf

 このようなSPY-1の高性能を支えるためには、人の手によるゴム気球の放球も必要になるわけです。

USS Milius (DDG 69)から放球される気球 (VIRIN: 230513-N-UA460-0266, U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 1st Class Greg Johnson)

 ちなみに、一定高度に達するとゴム気球が破裂しターゲットは落下するので、陸地から離れた船舶の交通の少ない海域で飛ばすようにしましょうね。

水平型ソノブイHQS-15とは何なのか

 HQS-15は海上自衛隊の哨戒機で運用されるソノブイです。海自のソノブイはあまり明らかになっている事項が多くないようですが、明らかになっていることをまとめておきたいと思います。

 

先行研究

ameblo.jp

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 まず、HQS-15そのものとしてわかっていることについてまとめます。HQS-15の調達について、確認できた中でもっとも古いものは2011年10月のものでした1) 。最新の調達情報は2024年11月であり、今後も続く可能性が十分にあると考えられます2) 。これらはいずれも沖電気工業株式会社が落札しています。なお、調達情報ではHQS-15は「水平型ソノブイ」と呼ばれており、水平に広がった形状であることが推測されます。

 HQS-15の情報としてわかっていることは、これだけです。ここからは、「水平型ソノブイ」をキーワードとしてどのような技術開発が行われてきたのか、見ていきます。

 

 まず、ここで言う「水平型ソノブイ」とは何なのでしょうか。特徴を理解するために、他のソノブイも含めて概要を知る必要があります。

 哨戒機等から投下され、音によって潜水艦を探知するためのソノブイは、その役割によって下記の2つ(または3つ)に大きく分類することができます。

 

①アクティブソノブイ:音波を送信し,目標からの反響音を受信するソノブイ3)

②パッシブソノブイ:目標の放射音を受信するソノブイ3)

(③音源ブイ:音波を送信するブイ。反射音は受信しない)

 

 今回は、このうち②パッシブソノブイに注目します。パッシブソノブイは潜水艦を探知するために音を受信する必要があるので、音を検出し哨戒機等に信号を送信する機能を最低限有する必要があります。

 現在用いられているパッシブソノブイのうち、(少なくとも米海軍で)最も多く使用されているのはDIFARです。DIFARは受信した音の信号強度と共に、到来方向を検出できるように設計されています。典型的なDIFARは、海面の浮きと上部電子機器ユニットから真下にケーブルが伸ばされ、動揺防止のための各種部品、下部電子機器ユニット、DIFARセンサ等がつながれています。他の多くのソノブイも海面の浮きからケーブルを介して真下にトランスデューサを吊るす構造が採用されています。

 この構造はシンプルで、ソノブイの投下前の形状(円筒形)にも納めやすい利点がありますが、開口長の大きなアレイセンサとして展開しようとした際にはアレイ形状が鉛直方向の一次元アレイに制限されます。

鉛直一次元アレイを有するAN/SSQ-77B VLADの概要図4)

 鉛直方向の一次元アレイにはどのような利点があるでしょうか?戦術ASWで使用される周波数等の制限も加味すると、一般的にはアレイに垂直な方向を中心とした指向性を持たせる設計が可能になると思います。このような場合、俯仰角の指向性はあるものの、方位角の指向性は無いことになります。俯仰角の指向性を持たせることができれば、水平に長距離を伝搬してくる音や、Bottom bounceによる伝搬した音を狙って検出する際に恩恵を受けることができるでしょう。また、ブイ付近の海面から到達する雑音を除くことができ、S/N比の改善が期待できます。また、(おそらく致命的な問題にはなりにくい可能性がありますが、)複数のセンサを使用するためセンサ由来のノイズの影響も低減できる可能性があります。

 一方で、この方式では方位角の指向性が得られないことは依然として課題です。特定の方位だけに著しくうるさい邪魔な音源(例えば商船が多く行きかう航路、何かしらの人工的な海洋構造物が稼働する音など)がある場合、その雑音によって他の方位から到達した音も覆い隠される可能性があります。また、浅海域においても前述の鉛直一次元アレイの利点が十分に発揮されるとも限りません。では、他のアレイを形成することができれば、これらの問題が解決されるでしょうか?

 似た考え方を採用すると、水平方向に大きな開口長を持つアレイを設計するのが一つの解決策になります。具体的には、水平一次元アレイや、二次元アレイ、三次元アレイのような設計です。この中で、HQS-15がとっている形態はおそらく水平一次元アレイです。二次元アレイは米海軍のAN/SSQ-101や防衛技術シンポジウム2012で展示された「水平配列型ソノブイ」、三次元アレイは米海軍が開発しているVADARがあります。

固定翼哨戒機用音響システムで使用する水平型ソノブイの図5)

水平配列型ソノブイと鉛直配列型ソノブイの指向性パターン。防衛技術シンポジウム2012にて展示。ぺ~ぶ♡すぱぃく(CV:五十嵐裕美)(𝕏: @PaveSpike)氏撮影

水平配列型ソノブイと鉛直配列型ソノブイ。防衛技術シンポジウム2012にて展示。ぺ~ぶ♡すぱぃく(CV:五十嵐裕美)(𝕏: @PaveSpike)氏撮影

 水平一次元アレイはソノブイでは主流とは言えないでしょうが、軍用ソーナーの分野では艦船搭載用の曳航ソーナーとして一般的です。艦船によって曳航されるソーナーは、線状のアレイの一端を艦船によって引っ張り、アレイそのもの及びさらに後方のドローグによって生じる抗力によってアレイがまっすぐになるよう引っ張られて形状が維持されています。しかしソノブイは推進機構を持たないために展開機構を工夫しないと所望のアレイ形状を維持できそうにありません。

 HQS-15がどのような設計なのか、一般人には(情報公開請求であたりでもしない限り)知ることができませんが、関連しそうな情報は少し探すことができます。沖電気工業と水平型ソノブイをキーワードに特許や実用新案を調べていくと、2つ引っ掛かります。

 一つ目はDIFARセンサと組み合わせた水平一次元アレイの特許です6)。無指向性ハイドロホンを直線状に並べたアレイでは、原理的に音の到来方向を特定することはできず、到来方向はアレイ軸を軸とする円錐面で与えられます。この方位の不確定性を解決するためにDIFARセンサを組み合わせたのがこの特許です。ここでは、ソノブイに取り付けたドローグが海流から受ける力によってアレイを展開することが想定されていたようです。

 もう一つはアレイの展開方法に注目した実用新案で、下記手順で展開するものです7)

①着水後、フロート、第二のケーブルコンテナ、抵抗装置からなる下部を切り離し、フロートに近い第一のケーブルコンテナからケーブルを繰り出しながらアレイを放出する。

②第二のケーブルコンテナがケーブルを繰り出しながら浮力により海面に浮上し、抵抗装置を海中に展開する。

 この展開方法により、水平一次元アレイが形成されます。アレイの保持に必要な張力は、海中の抵抗装置が受ける海流と、フロートが受ける海面流のベクトルの差により得る想定のようです。

実用新案記載の展開後の水平型ソノブイの図7)

 この設計は、水平配列型ソノブイやSSQ-101のような2次元アレイを有するソノブイと比較して、1次元ではあるもののより大きな開口長を得られる利点があります。一方で、この展開方式を採用していると仮定すると、アレイの向きは運用者が決定することができず自然任せになる課題は発生してしまうことでしょう(海象データにより展開方向をある程度予測することは可能かもしれません)。実用上どうなのか、というところは外からは容易に見えてこないところです。

 ということで、HQS-15そのものはわからないので周辺情報を集めた備忘録でした。

 

1) NJSS, Internet Archive, 2025年9月アクセス

https://web.archive.org/web/20240707115035/https://www.njss.info/offers/view/1535015/

2) nSearch, 2025年9月アクセス 

https://nsearch.jp/nyusatsu_ankens/672ed09b9381d4348819dd66

3) 防衛庁規格 水中音響用語-機器 , 2000.

4) R. A. Holler, "The Evolution Of The Sonobuoy From World War Ii To The Cold War", U.S. Navy Journal of Underwater Acoustics, 2014, 322-346.

5) 防衛庁管理局開発計画課, "平成13年度 政策評価書(事後の事業評価) 対潜機搭載システムの研究(音響システム)", 2014. 

https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11339364/www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/seisaku/results/13/jigo/honbun/03_02.pdf

6) 特開昭60-69576 

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-S60-069576/11/ja

7) 実開平7-38985 

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-H07-038985/21/ja

 

ズムウォルト級のRAM貼り替え

 電波吸収材 (RAM)と言えば何を思い浮かべるでしょう。(呼び方は、日本語では電波吸収体や電波吸収材料、英語ではRadiation absorbent materialやRadar absorbent materialなど様々あるが、ここでは本旨ではないので好きに読み替えてください)

 電波暗室のコーンを並べたような突起物、ステルス戦闘機の表面塗装、電波干渉の対応、用途は様々です。RAMは電磁波と相互作用して電磁波を減衰する材料ですから、材料としては電場成分に応答するものと磁場成分に応答するものに大別されます[1]。

 実際の現場で使用される場合には、設計した機能を出すと同時に環境に耐えることが出発点になります。ステルス機に使用されるRAMは劣化が早く(もちろんものによって変わる)、その維持管理に多大な労力がかかるという話は有名です。

 防衛技術分野において、電波ステルスは航空機だけのものではなく、艦船でも注目されていることは今更言うまでもありません。船舶はそもそも大きいRCSを低減することで、船舶を攻撃する手段たる対艦ミサイルにはレーダー誘導のものが多く低RCS化により誤誘導を狙う対抗手段の効果を上げられること、電波による捜索を逃れられる可能性が高まることなどの利点が期待されます。近年の水上戦闘艦では、程度の差こそあれ電波ステルス性は設計上の大きな要素であることでしょう。

 その中でも、米海軍のズムウォルト級ミサイル駆逐艦は非常に高い電波ステルス性を狙う野心的な設計で有名です。タンブルホーム船型で水面上では上に向かってすぼまる形状とし、上部構造物は一体となっています。通信やレーダー他の用途に供されるアンテナもなるべく上部構造物と一体化した平面アレイアンテナとしており、タラップも艦内に格納するなど見た目にはのっぺりとした印象を与えます。このような設計に加えて、ズムウォルト級のRCS低減策として取られているのが上部構造物へのRAMの貼り付けです。

 RAMには様々な形状があり、電波暗室などで使われるコーン型の他に、塗料の形態で塗布して用いるもの、パネル状のもの、柔らかなシート状のものなどあります。ズムウォルト級には当初、それなりの厚み(数センチくらい?)があるように見えるハードパネルタイプと思しきRAMが貼り付けられていました。ところがある時期から薄い軟質シートに変わったようです。

RAM貼り替え前後のUSS Michael Monsoor (DDG 1001)の比較。左は段になっているのが見える (左: 220728-N-DF558-1763, 右: 240210-N-NT811-1006)

RAMシートを貼った上部構造物 (250307-N-IE405-1118)

 貼り替えられた時期はUSS Zumwalt (DDG 1000)が2018~2019年、USS Michael Monsoor (DDG 1001)が2022~2024年の間でした。どちらもPSA (Post-Shakedown Availability)のタイミングです。就役時の設計で取り付けられていたものの、何らかの理由で(脱落しやすかったのか、性能未達だったのか、重量軽減だったのか、それとも当初はダミーだったのか、何なのかわかりませんが)就役前に修正されたようです。

 先日から横須賀に来ているUSS Michael Monsoor (DDG 1001)はブリッジ上正面のRAMシートが一部剥がれているようなので、写真を撮ったら拡大してみてください。

剥がれているRAMシート (USS Michael Monsoor, DDG 1001, 2025年7月)



[1] 中西, 高田, 「電磁波吸収材料」 化学と教育, 2012, 60 (11), 484 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/60/11/60_KJ00008329778/_pdf.

米海軍の水上艦船用対魚雷ハードキルシステム開発が転生するかもしれない

 米海軍は水上艦船の魚雷防護手段として、曳航式デコイのSLQ-25 NIXIEを使用しています。これは水上艦船を狙って発射された音響誘導魚雷を、曳航体から発する音で誤誘導させて、水上艦船を防御するものです。このようなソフトキル手段の他に、米海軍は産学と連携してハードキル手段を開発してきました。

 ペンシルベニア州立大・応用研究所(Applied Research Laboratory)は対魚雷魚雷(CAT: Countermeasure anti-torpedo torpedo)を開発し、これを用いるハードキルシステムは2013年にUSS George H. W. Bush (CVN 77)に搭載されました。他の空母にも搭載され搭載艦は4隻になりましたが、このプログラムは中止され撤去が開始され搭載艦は2隻まで減少しました。

www.psu.edu

 

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 一方でCATの設計を流用してちょうけは水上艦船の魚雷防護手段として、曳航式デコイのSLQ-25 NIXIEを使用しています。これは水上艦船を狙って発射された音響誘導魚雷を、曳航体から発する音で誤誘導させて、水上艦船を防御するものです。このようなソフトキル手段の他に、米海軍は産学と連携してハードキル手段を開発してきました。

 

 ONRのプログラムでペンシルベニア州立大・応用研究所(Applied Research Laboratory)は共通超軽量魚雷(CVLWT: common very light weight torpedo)を開発し、これを改良して対魚雷魚雷(CAT: Countermeasure anti-torpedo torpedo)として用いるハードキルシステムは2013年にUSS George H. W. Bush (CVN 77)に搭載されました。他の空母にも搭載され搭載艦は5隻になりましたが、このプログラムは中止され撤去が開始され搭載艦は2隻まで減少しました。

www.psu.edu

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 一方でCVLWTの設計から、CRAW (compact rapid attack weapon)の開発も行われました。これは潜水艦搭載用とした攻撃/防御用多用途小型魚雷で、対魚雷ハードキル機能を持つことが計画されました。このような機能に対応するものとして、Northrop Grummanは安価に供給可能な設計に変更したVLWTを開発しています。

 先日FY26のPBが公開されましたが、興味深いことに水上艦用対魚雷ハードキル手段の開発を再度行うべく計上されています。水上艦搭載型ATTの開発が一旦終了したのは変わりませんが、今度はNIXIE HK (NIXIEはSLQ-25のこと、HKはHardkill)としてされます。迎撃体はCRAWを流用するようで、CVLWTは当初からマルチプラットフォームを志向していたこと、NG VLWTはヘリコプターからの空中投下も試験されていることから問題ないのでしょう。

PB26資料(RDT&E BA 4)より、Surface Ship Torpedo Defenseの項

https://www.secnav.navy.mil/fmc/fmb/Documents/26pres/RDTEN_BA4_Book.pdf

 

 防衛省も、12式魚雷へ対長魚雷ハードキル機能を付与するべく、開発を進めるようです。VLWTはサイズが小さく、あらゆるコンポーネントで許容できる大きさ・重量が小さくなることは大きな制約になるでしょう。一方で12式魚雷の改良は設計変更の自由度の低さが課題になるかもしれません。より小型のビークルで同様の効果を発揮できるのであれば搭載量の観点からメリットが大きいでしょうが、海自の場合は既に短魚雷発射管を搭載している艦での使用を想定していることから運用基盤の整備の観点からは適しているように思えます。

www.mod.go.jp

 事前の事業調査では『高性能化した彼長魚雷に対しては、従来のデコイ、ジャマー等の音響欺まんによる対処、すなわちソフトキル機能だけでは防御が困難となってきたため、彼長魚雷を物理的に無力化するハードキル機能を保有する必要がある』と必要性が述べられています。米海軍は一度破棄した計画に類似する開発プログラムを再度始めることになりますが、今度は配備に至ることができるのでしょうか。