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米海軍DDGにおける小型UASの運用について

 最近の米海軍は艦艇を拠点とした小型UAS (sUAS) の運用を積極的に行っています。無人機の利点は危険な状況下においても人的被害が生じるおそれがないことがまず挙げられるでしょう。加えて特に近年の固定翼sUASに注目すると、小さい艦上フットプリントで長時間の水上・地上監視を実現できることは大きな利点になります。例えば以前取り上げたAerosondeは、形態によりますが、最大で12-20時間の航続時間を有するとされています[1]。ここでは艦に搭載されたレドームを見ることで、Aerosondeの運用能力の有無について推測しました。

orca-oruka.hatenablog.com

 今回は艦上からの運用が確認されている他の固定翼sUASである、ScanEagleとV-BAT、FlexRotorについて同様に確認します。

 

Insitu ScanEagle

 ScanEagleはScanEagle2が陸上自衛隊が導入したことでも気になる存在ですね。ScanEagleの地上ステーションと機体の間の通信には、パラボラアンテナが使われることが知られていて、これは一部の部品を取り外した形態で展示している写真が公開されています。同じアンテナは試験艦『あすか』における艦上運用の試験の際に艦橋の上に設置されていましたね。探してみてください(丸投げ)。

陸上自衛隊第15情報隊のScanEagle用パラボラアンテナ(VIRIN: 230725-M-YL383-1142)

 さて、米海軍の話に戻ると、米海軍は2000年代からDDGからScanEagleの運用を一部で行っていました。最もアンテナの確認が容易なケースは、2011年のUSS Mahan (DDG 72)の場合でしょう。

 USS Mahanは2011年にリビアに対して行われたNATOのユニファイド・プロテクター作戦に参加し、搭載したScanEagleの運用によって重要な役割を果たしたといいます[2]。このときの出港・帰港時の写真を確認すると、いずれもウイングに新しくパラボラアンテナのレドームが設置されていることがわかります。これにScanEagle用のアンテナが入っているのでしょう。

USS Mahanに搭載されたScanEagle用アンテナ。ブリッジの上ではなく、ブリッジと同レベルに設置されているグレーのレドームに注目 (VIRIN: 101107-N-5292M-307)

 ミサイル駆逐艦で同様のレドームの搭載を探すと、2007年のUSS Oscar Austin (DDG 79)、2008年のUSS Mahan (DDG 72)、2011年のUSS Roosevelt (DDG 80)、2012年のUSS McFaul (DDG 74)、2013年のUSS Gonzalez (DDG 66)、2014年のUSS Oscar Austin (DDG 79)とUSS Bainbridge (DDG 96)が見つかった。現在はESBへの搭載が確認できる。このレドームを探す際の特徴は、若干高さがあって頂点に出っ張りがあることでしょうか。

USS Oscar Austinへの搭載。SPY-1のアレイの上、左側のレドームがこれ。 (VIRIN: 141121-N-AZ301-337)

 

Shield AI V-BAT

 V-BATはテールシッター型のsUASであり、固定翼でありながら垂直離着陸を行うことができます。そのため固定翼機の高速性・高い航続性能を持ちながら、DDGのヘリコプターデッキにおける運用でもカタパルトや大型の回収用機材を必要としません。ダクテッドファンによる推進なので離着陸中に人が近寄ることができ、直接手で支えている様子が見られます。

 この機体のためのアンテナとしては、2021年USS Portland (LPD 27)、2022年のUSS Michael Monsoor (DDG 1001)とUSS Rushmore (LSD 47)、 USS Arlington (LPD 24)、そして2023年のUSS New York (LPD 21)で、下に示す三脚に乗せたレドームが臨時に設置されていることを確認しました。USS Arleigh Burke (DDG 51)でも2022年に運用されたと発表されました[3]が、同艦においては確認できていません。現在はこれが通信に用いられていると考えています。

USS Arlingtonに設置された、V-BAT通信用と思われるアンテナ (VIRIN: 220919-N-PC065-2005)

 

Aerovel Flexrotor

 FlexrotorはV-BAT同様にテールシッター型の機体ですが、より大型のプロペラを備えています。中東において米沿岸警備隊のカッターからFlexrotorを飛ばしている映像などがよく見られます。TF59において運用されており、USS McFaul (DDG 74)やUSS Indianapolis (LCS 17)における着艦・発艦が確認できます。USS Stethemでは、ホームページで見られる[4]のと同様にL3 HarrisのStinger MB[5]というターミナルを使っていました。

USS McFaul に搭載されたStinger MB (VIRIN: 231006-N-HY958-1037)

aerovel.com

 

 

おわり

 というわけで、以上が米海軍の水上戦闘艦で運用する固定翼sUASのアンテナ達でした。米海軍のDDGを見かけたらチラッと確認してみると、新たなsUASの運用能力付与など面白い発見があるかもしれません。おわり。

 

参考

[1] Textron Systems, Aerosonde UAS, 

https://www.textronsystems.com/products/aerosonde-uas.

[2] Wayback Machine; Insitu Pacific, ScanEagle Unmanned Aircraft Systems Backgrounder,

https://web.archive.org/web/20230310152911/https://www.boeing.com.au/resources/en-au/media/BoeingAustralia/Featured-Content/pdf/ScanEagle-Backgrounder_IPL.pdf.

[3] Shield AI, A Quarter-Million Hours & Counting: Shield AI’s Seasoned Flight Operations Professionals, 

https://shield.ai/shield-ais-seasoned-flight-operations-professionals/.

[4] Aerovel, Flexrotor and 100km tracking antenna,

https://aerovel.com/photos/flexrotor-and-100km-tracking-antenna/.

[5] L3 Harris, Stinger MB,

https://www.l3harris.com/all-capabilities/stinger-mb-ground-terminal-system.