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米海軍は無人機をどう使うのか: UxS IBP 23 その5

 前回のUxS IBP 23のエントリ公開から少し間が空きました。前回まではフェーズ1として行われたIBP 23.1、今回からフェーズ2たるIBP 23.2に入ります。23.1はカリフォルニア州の沿岸で行われたようでしたが、23.2はハワイ周辺海域、そして広大な西太平洋海域になっているようです。いずれもUxS IBPは、無人機を今後太平洋艦隊の戦力とどのように組み合わせていくべきか、といった知見を得るための一連の実験・試験です。

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 IBP 23.2については、実のところ報道がまだほとんどありません。数少ない公式からの発表は、8月中旬にIBP 23.2のためにパールハーバーに入ったUSV Sea HunterとUSV Rangerの視察が行われた、という軽い言及程度のものでした。この2隻の他に、USV SeahawkとUSV Marinerも同様にハワイに到着しました。

ハワイ・パールハーバーのUSV Sea Hunter (VIRIN: 230814-N-GZ228-1076)

 

USV Ranger (VIRIN: 230814-N-GZ228-1025)

 米海軍は中型および大型のUSVの運用に向けてプロトタイプの無人艦をそれぞれ2隻と4隻調達し、USVDIV-1に集中して配属して試験を行っています。中型USV (MUSV)は主にセンサーとして機能することを目指しています。トリマラン(三胴船)船型が特徴的なプロトタイプのSea HunterおよびSeahawkはASWを想定して曳航ソナーを装備できるようになっています。これらはIBP 23.1への参加が確認されています。

 大型USV (LUSV)はミサイル等の発射を担うことが期待されており、プロトタイプとして"Ghost Fleet Overlord"と呼ばれる4隻が建造されています。今回はそのうちRangerとMarinerの2隻が参加しているようです。Rangerは2021年にはコンテナの外装をしたミサイル発射機からSM-6を発射しましたが、今回はミサイル発射機は搭載していないようです。

 しかしその後にIBP 23.2について広報されることはなく、これらのUSVに関する情報はEd Schaefer氏 (𝕏: @ES12071207) による出航情報の投稿を最後にほぼ1カ月途絶えていました。

 しかし先週になって、状況が変わりました。USV Marinerだけですが、沖縄のホワイトビーチのすぐ沖でAISを発信した記録がMarineTrafficに表示されました。これによって西太平洋での活動をほぼ確信したところで、9月18日にRangerおよびMarinerが横須賀港に入港し、驚きをもって迎えられました。現地が羨ましい。グアム等に寄港してコンテナモジュールの積み下ろしをしている可能性も考えられましたが、特に目立つものは無いようです。

 さて、ほとんど公開されていないIBP 23.2について、現在得られる情報で特筆すべきことは、今行っている実験は今後の米第7艦隊の戦力として有人・無人システムを共に配備することを想定したものであることです。これまでに行われたIBP 21とIBP 23.1は、いずれも東太平洋を担当する米第3艦隊によって行われていたものでした。これまでと異なり西太平洋に展開しているのはこのためです。IBPは実験的なもので配備が決まっているわけでもなければ、具体的に何をしているのかという点は依然明らかになっていないため疑問の残るところですが、2030年代の部隊構成に大きな影響を与える可能性のある実験であることは間違いなさそうです。しばらく目が離せそうにありません。

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