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米海軍空母の対魚雷ハードキル

 米海軍の原子力空母USS George H. W. Bush (CVN 77)は2023年4月12日にジブラルタル海峡を通って地中海を出ました。2022年8月25日に大西洋から地中海に入って以来、実に230日を地中海で過ごしたことになるそうです。

news.usni.org

 そんなUSS George H. W. Bushの写真をDVIDSで眺めていると、ある写真が目に留まりました。空母に搭載された曳航ソナーです。

USS George H. W. Bushの曳航ソナー (VIRIN: 230416-N-IX644-1202)

USS George H. W. Bushの後ろ姿。赤丸のところに曳航アレイを設置する (VIRIN: 230321-N-EH998-1027)

 空母というと搭載ソナーの印象は薄い(主観)ですが、ブッシュは搭載しています。これは何も潜水艦を自ら探知して――というものではなく、自らの対魚雷防御のためです。

 空母のようなHVUは直接的な攻撃に脆弱であり、そのためにもCSGを編成するわけですが、敵潜水艦による雷撃は大きな脅威です。そこで米海軍は対魚雷魚雷防御システム(ATTDS: Anti-Torpedo Torpedo Defense System)という対魚雷ハードキルシステムの開発プログラムを開始し、2013年度にブッシュに最初のプロトタイプを搭載しました。他にUSS Theodore Roosevelt (CVN 71), USS Dwight D. Eisenhower (CVN 69), USS Harry S. Truman (CVN 75), USS Nimitz (CVN 68)の4隻に搭載されました。

 ATTDSは魚雷警報を発するTWS (Torpedo Warning System)と短魚雷のように海面上から発射されて魚雷を探知・破壊するCAT (Countermeasure Anti-Torpedo)からなります。5隻の空母に搭載されて2022年度まで開発・評価が行われてきましたが揮わず、プログラムは終了することになりました。

CATの搭載場所はここ (VIRIN: 230321-N-EH998-1050)

 従って空母に搭載された機器も撤去が進められ、22年度までに2隻、23年度に1隻からの撤去がなされることとなり、最後の2隻も維持のための予算しか要求されていません。ハードキル魚雷防御の広い配備は成りませんでした。